SIDE:小鳥遊
俺の同室者の最初の印象は、美形なのに気さくな奴という印象だった。
テレビ画面の向こうに居るような所謂アイドル顔をした男だった。
本人も自分の素材の良さを自覚しているようで、それを最大限に生かす、髪型、しゃべり方、立ち振る舞いをしているように見えた。
その男、島田 優斗は、その徹底したキャラ作りが功を奏してか、毎夜とまではいかないまでも、良く、部屋に関係を持つための相手と帰ってきているのを目にした。
一度、共有スペースで、事に及んでいたときにはち合わせてしまったことがあった。
嫌悪感が募って「気持ち悪い。せめて共有スペース以外でやってくれ。」とだけ言って自室にこもった。
その後、顔を合わせたときにあいつの事なんてどうでもいいはずなのについ「アレはお前の恋人か?」等と聞いてしまった。
なぜ、そんなことを聞いてしまったのかその時は全く考えもしなかった。
案の定、特定の相手ではないという返事で、こんこんと説教をした覚えがある。
その後、何故か島田に対する苛立ちが募り、距離を置くようになった。
わざと緩く見せるその手法は歩き方まで、徹底していて、ぺたんぺたんと歩くその足音にも苛立っていた。
ただ、セフレ関係にあるであろう相手ともめているところをみたことは皆無なので、そこらへんはしっかりしていたのであろう。
まあ、そもそも、こんな観察していなければわからない事を一々覚えている事の理由は今ならわかる。
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その日は、部活も終わって部屋で、課題をしていたところ、部活の仲間の田中から電話が入った。
大概いつもメールなので、不審に思いながらも出ると、同室者である、島田 優斗が双子の弟である島田 拓斗と争っているとの事。
ああ、そういえば弟と同室者だったかと電話の相手の部屋を思い出す。
とにかく、やばくなって寮監を呼ばれる前に早く自室に連れ戻した方がいいということになり、迎えに行った。
部屋について、受けた説明は要は痴情のもつれと言うことなんだろうか?人の恋人に手を出したと目撃者である田中から説明を受けた。
イラついて島田の首根っこを掴んで引きずるように自室へ戻った。
部屋の前まで来て、島田を確認すると普段の雰囲気等かけらもなく、はっきりいって驚いた。
あれだけ徹底していたユルい感じが全くない。
何故か、胸の奥の方がざわつく感じがして、今のこいつを放っておけないそう思った。
リビングで話を聞いた。
以前あれだけ、説教をしたにも関わらず、俺の口から出てきたのは、島田のセフレに関する肯定的なセリフだった。
充分その件で傷ついているのがわかって俺はとにかく、こいつをこれ以上、落ち込ませたくない、その気持ちで一杯だった。
つい、手が伸びて、島田の整えられた、髪の毛に触れ撫でまわしてしまった。
いつもの、ユルいしゃべり方も、今一上手くいっておらず、普通の喋り方と混ざりながら、ぼろぼろと涙を流す島田をみて、愛しさがあふれる。
ああ、そういうことか。
その時、合点がいった。
俺はこいつの事が好きなのか。
わかってしまえば単純なことだ。
こいつに、この学園の雰囲気に乗っかってと説教をしたことがあるが、俺も同じ穴の狢か。
俺はこいつに説教をする資格なんて本当は無かった。
こいつを追いつめたのは俺の所為でもある、そう思うと、どうしようもない気持ちになって、島田を自分の方に引き寄せるようにして背中をさすった。
島田が俺の胸にすがりついて泣いているのをみて、愛おしさとそれから、こいつが泣いているのが俺の前でよかったという独占欲のような感情で俺の中が満たされていくのが分かった。