真っ直ぐに見つめる2

完全に嫌われているというかウザがられていることは確定なので、本人に分からないように、見つめるだけの生活が続いていた。
同室だけど、部屋で小鳥遊をあまり見すぎると、きもいよなと言うことで、ほとんど部活や自主練をする姿を校舎から眺めるだけだった。

そんなときに出会ったのがツバサちゃんだ。

年齢に比べて少し幼いところのある彼は正に無垢という言葉がぴったりな子だ。
小鳥遊の部活風景をいつものように眺めていたところ、俺の気持ちがばれてしまってから唯一、恋愛関係の話ができる友人になった。

ツバサちゃんは、俺の双子の弟が好きだけど振られたらしい。
俺に言わせると、弟の拓斗は何やってんだ?と謎に思ってしまう。
ツバサちゃんがどうこうではなく、あの個人主義者の拓斗が誰かとわざわざ不必要な話をしたり何か絶対しないだろう、そういう確信からだ。
それに、拓斗は前に付き合っていた人もいたみたいだし、初恋もまだで恋心に無自覚なんてことはないだろうから、マジで意味が分からない。

そんな疑問もあったけど、それなりにツバサちゃんと仲良くやっていた。この仲良くが良くなかったみたいで、俺と噂になってしまったのは良くなかった。
そんなある日の事だ、俺がツバサちゃんの部屋を訪ねると突然、同室者に掴みかかられた。
一瞬、は?と状況が分からなくなるも、その同室者が怒鳴り散らす。

「あんた、どの面さげてここに戻ってきたんだよ!」
「??えっと何か俺したっけ??」

この子は一体何を言っているんだろう。俺の気付かないところで何か気に障るようなことでもしたんだろうか?

「はあ?!ふざけんのも大概にしろや。」

さらに、激昂した様子で怒鳴られる。

「何を怒っているのか分からないけど、とりあえずツバサちゃんに合わせてもらえないかな?」
「あんなことしておいて会わせられる訳ないだろうが。」
「だから、何か勘違いしてない。俺心当たり全然無いんだけど。」

正直、ツバサちゃんと仲違した覚えが全くない。
この状況どうすりゃいいんだと頭を抱えたい気持ちになっていると、ツバサちゃんが玄関まで出てきた。

「ツバサちゃーん。何かお友達が勘違いしているみたいで。
って、あれ??何か具合悪い?」

なんかふらふらしているし、顔色も良くない。

「っつーかお前の所為だろうが。」
「…ちがっ。」

「ツバサ無理しなくていいから部屋戻ってな。俺が追い出すから。」

うーんと、俺がツバサちゃんに何かしたことになっているようだ。
何かって俺何かしたっけ?でも、マジな話、ツバサちゃん具合悪そうだし、何が起きた?

「違う。島田先輩が…。」
「だから、こいつがお前を襲ったんだろう。今追い出すところだからツバサは戻ってな。」
「襲ったって!!」

襲った。俺が?ツバサちゃんを?何を言っているんだ?
頭の片隅で警鐘が鳴り響く。

「楓、違うんだ。優斗先輩じゃない。」
「はあ?何言っているんだ。今更優斗先輩かばっても何にもならないだろ?」
「違う。島田先輩が…。」
「…?」

ああ、そういうことか。俺はもう一人居るもんな。もう一人の俺、つまり同じ顔をした弟の事を言っているのか。
あいつが、ツバサちゃんを襲った…。
何を考えているんだ本当に、あいつは。
とりあえず、パニックを起こしかけているツバサちゃんのために、説明をする。

「ツバサちゃんは僕のことを島田先輩と呼ぶことは無い。
…島田先輩と呼ぶのは」

「弟の拓斗だけだ。」

本当に拓斗は何がしたかったんだ。
しかも、あの野郎、わざわざ俺のフリをして襲ったらしい。
切れるってこういうことを言うんだな。
はっきりいって今の俺はめちゃめちゃ怒っている。
とりあえず、ツバサちゃんを部屋に戻して弟の部屋へ向かった。

ぶん殴って、怒鳴りあって、拓斗ははっとしたように、その場から、駈け出した。
たぶん、ツバサちゃんのところへ行ったんだと思う。

たぶん、あの二人はもう大丈夫そんな気がした。