Interval(その後の日常)

―――その後の日常―――

僕と拓斗先輩が付き合いだして1カ月が過ぎた。
寮生活ということで、どこかに出かけたりということは出来なかったけど、毎日一緒に登校したりお昼を一緒に食べたり、休みの日で楓が居ないときには一緒に僕の部屋で夕食を食べたり、毎日楽しくて幸せだ。

今日は一緒に図書委員の会議に出るので一緒に帰る約束をしている。拓斗先輩は図書委員長だし、僕も委員の当番があったりでなかなか一緒に帰ることができないので少し…いや、かなり嬉しい。
でも、世の中そんなに上手くいかないわけで……。

「来週の当番の件ですが、何故、委員長と松木が一緒なんですか!?公私混同はやめていただきたい。」

バンと机をたたきながら2年生の図書委員が発言をする。
皆の視線が僕と拓斗先輩に注ぐ。僕は拓斗先輩と一緒の委員うれしいけれど、そうだよな、他の人からしてみれば、迷惑なのかも知れない。拓斗先輩は委員長だけあって仕事もとても早いし……。
というか、皆、僕と拓斗先輩がお付き合いをしているのを知っているということだろうか。少し恥ずかしい。
でも、あの拓斗先輩が公私混同というか依怙贔屓のようなことを本当にするんだろうか?僕が一人でどうしたらいいのか分からず、おろおろしていると拓斗先輩が言った。

「は?何言ってんだお前…。前からこの日は閉架の整理を行うと周知してあったはずだ。普段の当番の仕事より多くなるということで希望者を募ったが、やってもいいと言ったのが松木だけだっただけだろう。何だったら、当番日程変更するがどうする?」

明らかに苛立った様子で拓斗先輩が話す。
そうだった、忘れていたけど本の整理業務をすることになっていたんだっけ…。副委員長は図書便りの締め切りと重なってそちらにかかりきりで人出が足りないと拓斗先輩が言っていたので、じゃあ僕がと名乗りを上げたのにすっかり忘れていた。
意見を言っていた図書委員の人はふてくされたように、黙ってしまっていた。

「他に無いのなら、以上だ。解散。」

拓斗先輩の声で、皆ざわざわと席を立つ。
やっぱり、僕と拓斗先輩では釣り合わないので、あんな風に言われてしまうのだろうか?拓斗先輩かっこいいし、図書委員の仕事もすごくできるし、周りからの人望も厚い。そんな人が僕と付き合っていること自体が周りからは間違っていると思われてしまうんだろうか?
そんなことを思っていると不意に

「松木、気にすることないぞー。」

と3年の先輩に頭をぽふぽふ撫でられる。
ありがとうございますとお礼を言う。すると頭を撫でた先輩の横にいた他の先輩が「マジ、最近松木かわいくなったよなー。」と笑っている。かわいい?だろうか?
頭が?(はてな)でいっぱいになっていると、僕の頭を撫でている手が、ぐいっとずらされた。

「拓斗先輩……。」

そこには、機嫌の悪そうな顔をした拓斗先輩がいた。
ああ、さっきの件、上手く僕が自分でフォローできなかったから怒っているんだろうか?

「いいんちょー、男の嫉妬は醜いですよー。」

と笑いながら、先輩二人は僕からバイバーイと離れていく。
嫉妬?誰が誰に?…とそれよりさっきの件を拓斗先輩に謝らないと。

「何、他の男に触らせてんだ?」
「へ?」

僕が謝るより先に拓斗先輩が話しかけてきた。
触らせる?あまりの予想外の内容にへんな返しになってしまった。

「ツバサは俺にだけ撫でられてればいいだろ?」

もしかして、拓斗先輩は僕が他の人に頭を撫でられたことを怒っているんだろうか?独占欲というやつ?もしそうならうれしい。
顔がじわじわと赤くなっていくのが自分で分かる。

「…拓斗先輩だけ、撫でてください。」

どうしても、恥ずかしくてとても小さな声になってしまったが、何とかそれだけ言う。
拓斗先輩は一瞬驚いた顔をしたけどすぐに笑顔になって、僕の頭をわしゃわしゃとなでた。

その日は約束通り、拓斗先輩と二人で寮に戻った。帰り道拓斗先輩はずっと僕の手を握っていてくれてすごく恥ずかしかったけど、うれしかった。

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ちなみに、翌週の図書当番は結局他の希望者はいなくて、二人で閉架の整理をした。量も多かったし、かなり遅い時間までかかって大変だったけど、拓斗先輩との作業だったから、すごく幸せな気持ちで出来た。帰り際にそう言ったら「俺もだ」と言ってチュッとキスが降ってきた。恥ずかしくて、真っ赤になってしまったけど拓斗先輩も僕と同じ気持ちで過ごしていたことが本当にうれしかった。