それでも一緒にいたい29

「好きだ」

その言葉を聞いて、歓喜とそんなはずはないという気持ちが両方襲ってきてはっきりいってパニックになってしまった。
ただ、じわじわと顔というより全身が熱くなっていく事だけは分かった。
たぶん今僕の顔は真っ赤だろう。鏡を見なくても分かる

「え?…え?」

島田先輩は今まで見たことない、本当に優しそうな、むしろその笑顔でこっちがとろけちゃうんじゃないかという笑顔でこっちを見ている。
(というか、島田先輩はあまり笑わない方なのでものすごくレアだと思う。)

「そういう顔をするということは、まだ、俺のこと想っていてくれていると考えていいか?」

そっと僕の頭に手を伸ばしポフポフとなでながら島田先輩は聞く。
僕が先輩のことをそんなにすぐあきらめられるわけ無いじゃないか、たぶん振られると分かっていて告白するくらい島田先輩のことばかり僕は考えている。

「僕も、僕も、好きです。」

ぽろり、じわりと目元から湧いた涙がこぼれた。
島田先輩の手が、僕の目元をぬぐう。

それから、ふわっと、ぎゅっと抱きしめてもらった。
幸せでまた、涙がこぼれた。

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「髪、染めたんだな」

そう言われながら、頭をなでられる。

あの後、恥ずかしながら泣いてしまった僕を島田先輩は頭や背中を撫でて落ち着かせてくれた。
我に返った時は恥ずかしかった…。

心配してくれた楓には落ち着いたところですぐ電話をした。
島田先輩に好きって言われたと報告したら、自分のことのように喜んでくれた。
最後に『今日は知り合いの部屋に泊まるからごゆっくりー。』と言われてすごく恥ずかしかった。

電話が終わると、島田先輩が僕を膝の上に乗せるように座らせた。
すごく自然な動きでそうするので、大した抵抗も出来ず今も膝の上。
なんだかとってもくすぐったいような気持ちになる。

「髪やっぱり変ですか?」

島田先輩はすぐに否と答えた。

「俺に振られたから染めたのか?」

と逆に聞かれたので、それもあるし、自分が変わりたかったからそのきっかけとしてということを何とか答えた。
自分自身のことをあまり言うのが得意じゃないのでしどろもどろになってしまったし、声も小さくなってしまったけど、島田先輩はせかさず聞いてくれた。
僕が告白する前、図書室で色々話をした時のようで自然と笑みがこぼれた。

すると、島田先輩が僕の目尻にそっと唇を寄せた。
キスされている、と脳が判断すると同時に顔が赤くなるのが分かる。
わたわたしていると、島田先輩は微笑みながら。
「ほんと、松木はかわいいな。」
と、言ってくる。
赤くなって、火照っている顔はしばらく収まりそうにない。