「おいアレ、ヤバいだろ…。」
葛西の声を聞きながら、俺は、周り中があの馬鹿の行動にに注目しているであろう事も頭から抜け落ちて思わず立ち上がり、早足で馬鹿の方に進んで行った。
「やりすぎだ。」
馬鹿の腕を掴んで声を掛けた。
同時に左手で、馬鹿が掴んでいる手を引き離した。
叫んでいた女性は涙目でこちらを睨みつけながら手をさすっていた。
「こんなところでどうしたんですか?」
先ほどまで痛めつけていた女性など目に入らない様子で馬鹿が話しかけてきた。
「友達と飯食ってたに決まってんだろ。」
俺が何時もの通り言いかえすと、ニッコリと表情をを乗せて馬鹿が頷いた。
その瞬間、ザワリとざわめきが起きたが、俺には関係ないと思いたい。
「ここは、飲食をする場所ですから、そうでしょう。ただ、僕が聞きたいのはそういう事ではなく、何故君が彼女を庇うような事をしているのかという事をお聞きしたいのですが?」
「は?何故ってそんなの、痛がってるからに決まってんだろ!?何、お前痛がってたの見えて無かったのか?普段からおかしなことばかり言うと思ってたんだけど、お前、耳本当についてんのか?」
「やだなあ、ちゃんと聞こえていますよ。ただ、汚らしい手で僕に触れようとした責任は取ってもらわないとと思っただけですよ。」
「何が、『だけですよ』だ。お前、あれだけ俺にべたべた触っていて、何が汚らしいだよ。馬鹿も休み休み言えや。」
馬鹿との話にヒートアップしすぎて、俺自身が正に『馬鹿も休み休み言えや』な発言をしている事にこの時は気が付けなかった。
「だって、君だけは平気なんですよ。」
ほら、と言いながら俺が付かんている方とは反対の手でグイッと手を引かれ体制を崩す。そのまま、馬鹿の方へダイブする形となった。
何するんだよと睨みつけようとあいつの方を向いた時、そのまま馬鹿の顔が近付いてきてぶちゅーとでも擬音が付きそうな勢いでキスされた。
あまりの事に硬直する俺の唇をぺロリとなめながら変態の顔が離れて行った。
「ね?」
首をかしげながら変態に話しかけられたが知るか。
俺は全身を怒りで真っ赤にしながら
「ふざけるな、死ねよボケー!!」
と叫んだ。
マジでふざけんなよ、クソ。