精霊はこんな風に人間と掛け合いはしない。
それを友人が分かっている感じはしないけれど、何も言わない。
それは精霊の力が恐ろしかったから、ではなくて友人の精霊に対する態度を見ての事だった。
「お前の力ならすぐにでも戦況をひっくり返すだろうな。」
そうすれば停戦ができる。そこでお別れになるのか?
そう言った友人に召喚精霊は面白そうに笑う。
「さあ、それはどうだろうねえ。」
うんざりした様に友人がため息をつく。
「あいつらの事はお前が気にすることじゃない。」
義兄弟がそう言う。
「義兄さん……。」
普通じゃない事がおきたのだろう。
「とにかく、無事で良かった。」
もう俺の代わりに死地に向かうな。
無理な話なのはお互いに分かっている。
けれど義兄弟のの切実な声に思わず頷く。
精霊が今しがた言っていた言葉を思い出す。
誰にも祝福されない関係だという事は知っている。
だけど、もう二度と見れないと思っていた彼の顔が見れた。もう二度と聞けないと思っていた声が聞けたのだ。
願ってもいいだろうか。
俺と義兄弟の未来を。
「よかったなあ。」
友人が俺に向かって言った。
それで、誰にも祝福されない訳ではない事に気が付く。
最初から友人は俺の気持ちを知っていて、応援してくれていた。
それで、ようやく一歩踏み出せる。
俺は多分臆病なのだろう。
「好きです。」
ここが戦場なのも忘れてそう伝えると、俺を抱きしめる腕により一層力がこもった気がした。
了
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