「自分が化け物だと、もう割り切れてますよ。」
だから大丈夫と一総に言い聞かせる様だった。
それに、と理一は付け加えた。
「石は別に、破邪顕正の証しなんかじゃないんですよ。」
理一は一総と視線を合わせる。
それから先ほど見せた妖艶な笑みとは全く違う、困った様な笑顔を浮かべた。
「この石はうちの一族の先祖がえりの記憶が入ってるですよ。」
自分自身がが今作った石は理一の記憶の一部が混ざってしまっている。
それは強く何かを思った時の記憶なのだろう。理一の知っている限り先代のものもその前のものも殺戮を行っているときのものやそれを酷く後悔した様子、それから性行為の最中の記憶なんていうものもあった。
「そんな事は知らされてないし、当家で保管しているものを確認した事があるが記憶なんて。」
槍沢が言う。
「同じ先祖がえり、所謂九十九だけが見える様だから。」
理一は一総をみて「多分アンタの記憶も入ってしまっていると思います。」と言った。
一総は無表情から一転して吹き出した。
「そうか、木戸が気にするのはそこなのか。」
喉の奥でくつくつと笑いながら一総は言った。
理一は、何故一総が笑っているのか分らなかった。
ただ、不思議そうに一総を眺めている。
その間、誰も二人に口出しをしようとはしなかった。
「なあ、白崎のお姫様。」
一総がアイラに向かって声をかける。
「嫌ですと言ったら?」
まだ、話し始めてもいないのにアイラが返事をする。
一総はふう、と溜息をつくと訂正も反論もせず、まるでアイラの返事が無かった様に話しを続けた。