「おい、相手がぼろ雑巾みたいになってるんだし、そろそろやめとけ。」
理一は声がした方を向く。
やや呆れの見える声と顔で一総が言った。
なんで呆れられているのかがよく分からない。理一はもう一度もっている物を引きずりあげる。
『やめろ。』
もう一度一総が言った。直ぐに力を使ったのだと気が付いた。
ドサリ。
手に持っていたものを落とす。
「やりすぎなんだよ。別に完全に排除する必要が無いこと位分かっていただろ?」
一総は理一が落とした人間を確認する。
息はある。
「大丈夫か?自我は保ててるか。」
理一は瞬きを何度もしてから答える。
「大丈夫じゃないのかもしれないけれど、とりあえず自分が今何をしたかは理解できてる。」
そうか。一総は片手で理一を抱きしめる様に引き寄せる。それから、背中を何度かとんとんと優しく叩いた。
「お疲れ様。後よく耐えた。」
理一が目を見開く。
「こいつら引き取らせたらゆっくりしようか。」
一総が目を細めて蠱惑的に笑った。
理一が昂りを鎮められていない事を察してなのだろう。その誘いが正直ありがたかった。