命令

※本編36後位です多分

その時から一総が怒っていることに理一は気が付いていた。

「こんなものはいらなかった。」

繰り返し言う一総は契約をする事が本位ではないこと位理一にも分かっていた。

『立て。』

命令として一総が言った。
恐らく何かあった時の為に使っておこうと思ったのだろう。

理一が立ち上がると、一総は眉根を寄せる。

「この能力、それなりに反動があるな。」

まともに使って、体が壊れない人間の方が少ないだろうなと言われるが過去先祖返りで契約をしたものが居ない為理一には実際のところどうなのかは分からなかった。

「慣れておいた方がいい気がするから、色々試してみていいか?」
「そりゃあ、まあ……。」

そもそも、だまし討ちとはいえ理一が請う形で契約をしたのだ。いつか本当に抑止力として使うために必要だというのなら断れないだろう。

「じゃあ、寝室へいこうか。」
「は?」

何故寝室と問う暇も無く、一総は先に寝室に向かってしまう。
これから何をするのかはある程度の検討は着いた。

「なんで、そっち系にもってくんすか。」
「何かあっても俺の異能で制御可能だからに決まってるだろ。」

一総は当たり前の様に言う。

「ほら行くぞ。それとも命令された方が気が楽か?」
「いや、いいっす。」

二人は並んで寝室へ入った。

ベッドに理一を押し倒して一総はキスをする。
唇の形を確認するように舌を這わせると口腔内に舌を入れた。

それだけで理一は下肢が膨らむのが分かった。
そんなつもりじゃなかったのに、期待で一総の二の腕を掴む。

しかし、一総はパッと離れてしまった。

「なあ木戸。一人でやってみようか。」
「は?」
「だから、俺の前で自慰して?って言ってるの。」
「無理に決まってるでしょ!」

思わず理一は叫ぶように言い返した。

『じゃあ、オナニーしてみようか。』

一総に言われ、理一は一総を睨みつけた。
一総が理一の髪をなでる。その手は小刻みに震えていて反動があったことが分かる。
それでもそれを伝えるつもりのない様で、花島としての妖艶な笑みを一総は浮かべていた。

理一の体は一総の命令を聞きたいと動き始めていた。
一総が完全に理一から離れ、ベッドの淵に座って理一を見ていた。

理一は軽く胡坐をかく様に座り直すとズボンごとトランクスをずらす。
取り出したものはすでに堅く勃ち上がっている。

理一は一総の視線に気が付き思わず下を向く。
止めたいと思うのに手の動きは止まらない。

のろのろと竿をしごくと、一総は笑顔を浮かべながら『ちゃんと自分が気持ち良くなる様にしないと。』と言う。

そろりと、理一の手が自分自身の先端を撫でる。

「ふぁっ。」

思わず出てしまった声が恥ずかしくて理一は目をつぶる。
そうすることで余計に自分の手の感触も、それから一総の視線も強く感じてしまうけれど、とてもじゃないけれど目を開いて現状を直視する気にはなれなかった。

「んぅ、んんっ――」

ゴシゴシとこする手の早さも握り込む強さもどんどん激しくなっていることに気が付いているのに止められない。
理一はいま自分の顔が酷くだらしないものになっているだろうと思った。

相変わらず一総は妖艶な笑みを浮かべたまま理一に指一本触れてはいなかった。

「ううっ、あ゛っ……。」

感極まって声を上げながら達した理一をみて一総はようやくもう一度理一に触れた。

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