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ぼたぼたと腹から血液が零れ落ちている感覚はある。
肉が崩れる感じはしないのは恐らく一総が調節してくれているのかもしれない。

手の先から痺れるように冷たくなって、本能的に引き抜こうと掴んだ一総の腕が温かく感じる。
首筋に当たる一総の吐息も熱い位だ。

まだ、辛うじて意識は保っていられているし、力もこめられている。
だからもう少しだ。

「塊の大きさは?」

一総が抑揚の無い声でアイラに言った。

「もう少しです。」

アイラに返されて一総がもう一度理一の腹の中を探るようにかき混ぜる。
逆流した血液の所為で口の中が鉄臭い。
理一は痛みに苛まれながらも一総の顔を見た。

一総は表情を辛そうに歪めていたが、理一と視線が合うと優しげに笑う。

「……アンタの異能は痛覚の共有じゃないんだよな。」
「だとしたら、木戸は羞恥でどうにかなるだろうな。」

「大丈夫。違うよ。」と吐息交じりで一総は答えた。

一総の顔色は先ほどまでと変わらない。自分はきっと随分と青白い顔をしている事だろうと理一は思った。

「手、別に爪立ててもいいから。」

まるで行為中にいう睦言のように一総は言った。
思わず理一が息をつめてしまうと、一総がぐるりと理一の内臓を撫でた。

「もう充分です。ありがとうございます。」

そうアイラが言ったのはそれから数分の後だった。
一総は無言で理一から手を引き抜いた。

よろり。理一の足が一瞬重心を失ったようによろめく。

一総が理一の脇を支える。

「ありがとうございます。」

理一が言うと一総は「今回で最後だからな。」と返した。

「木戸悪かった。ありがとう。」

白崎が震える声で理一に伝えた。
理一は青白い顔で笑顔を浮かべる。

「木戸達付き合ってるんだよな?
いつからだ?」

白崎に聞かれ理一は一総を見た。

「昨日からっすか?それとも――」

理一が聞くと一総は「どっちでも、木戸がいいと思う方で。」と答えた。

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