はっ、という呻きとも吐息ともつかない音が聞こえる。
きちんと契約の効力は発動したはずだった。それでも理一の手が腹に埋まった一総の手を掴む。
「ここでやめておくか?」
確認する様に一総が聞く。
ひゅっと白崎が息を呑む音が聞こえた。
「……大丈夫か、なんて聞いちゃ駄目だよな。」
搾り出すような声だった。
「大丈夫だよ。」
理一はしっかりと答えた。
「いいか?」
一総にもう一度聞かれて理一は頷く。
「――アイラちゃん、別にこんなとこ見なくてもいいから。」
理一がアイラに言うが、彼女は首を横に振る。
「せめて見届ける事が白崎の義務ですから。」
今までのどの言葉よりはっきりとアイラは言った。
もう理一は何も言わなかった。
「すごいな。えぐった端から治癒していく。」
理一の腹に手を埋め込んだまま一総が言う。
それから一総は理一を抱きしめる様に引き寄せると耳元で理一にしか聞こえない音量で囁いた。
「かき混ぜすぎると筋肉が収縮して止血になってしまうから、ゆっくりとかき混ぜるな。」
その声はとても甘やかでまるで色をはらんでいる様だった。
それが二人きりの間に時々聞こえるもので思わずその時のことを思い出してしまう。
ゴクリと理一は唾を飲み込む。
痛みが少し和らいだ気がして、息を吐き出した。