「人目は避けて欲しいんですが……。」
理一がポツリと言った。
「それは勿論。」
アイラはふわりと笑った。
まだ了承した訳ではない。けれど、もう血を差し出す前提になってしまっている。
それはわかっていた。なし崩し的に渡したあと他の人々からの要求がどうなってしまうのかという予想も少しばかりであれば付く。
それでも、白崎の妹である彼女の願いを無碍に断れなかった。
「俺も一緒にいていいか?」
白崎が静かに言う。
「あんまり見ていて楽しいもんじゃないよ。」
理一が返すと「それでもいい。」と白崎が言った。
「理一。」
静かに雷也が声をかける。
「大丈夫だよ。迷惑ばっかりかけるな。」
「別に迷惑なんて思った事はない。
あと、お前は絶対に誰かを手にかけたりしないから。」
実家と槍沢は任せとけ。雷也はそう言った。
槍沢の舌打ちが聞こえてしまったが、理一にはどうする事も出来ない。
「俺の部屋でいいっすか?」
一総、それから白崎兄妹をみて声をかける。
あの部屋は壁の中にもそれ以外にもそれなりの防御策が施されている。
だから、一総に手伝いを断られたとしても少しはマシだろう。
あと、料理用の包丁がある。カッターで事を終わらせる事はさすがに無理だと分かっているので道具があるところに行きたかった。