AIと俺1

 最初はゲームのモニターにでも当選したのだろうという理解だった。
 送られてきたのは、一台の手のひらよりやや大きなサイズの端末と簡易な説明書と、プロジェクトに当選した旨が書かれた紙が入っていた。
 その名前に見覚えはなかったが多分何かの懸賞だろうと思った。無料とは書いていなかった気はするがその時は詐欺だろうという事にまで気はまわっていなかった様に思う。
 説明書といっても簡素なものだった。
 飾りっ気の無い、白地に黒で淡々と端末の扱い方が書いてある形だ。直ぐにそれを読むのにも飽きてしまい端末を起動させた。往々にしてこういうのはチュートリアルモードがあるものだし進めながら読んだ方が早い。
 案の定起動した画面には説明が淡々を表示されていた。

 説明を簡単にまとめるとこうだ。
 プレイヤーは人工知能と会話をし、沢山のものを見聞きさせ育てる。
 人工知能は育て方によりできることに違いが出てくる。
 優秀な人工知能を育てた者には褒章が与えられる。

 AIはここ最近SNSで会話をしようという試みが実際にあることを知っていたし、面白半分に話かけて見たこともある。
 だから、ゲームもその流行に乗ったのかと思った。けれども取り扱い説明書にも端末の説明にもこれが本当のAIを使ったゲームなのかそれともAIを育てるという設定のゲームなのかの記述はなかった。
 それが逆に興味を引いた。まあ、最悪モニターということでまだ一部未実装で中の人が居たとしてもそれでよかった。

 AIに接続ボタンをタップしてゲームを開始する。画面に表示される文字と共に聞こえてきたのは男とも女とも判断できない音だった。
 声というよりは、電子音に近い。かなり凝っているなという印象だった。

「はじめまして。あなたのことはどうお呼びすればいいですか?」

 そこで初めて、音声認識モードがあることに気が付いた。入力は正直言って手間だ。音声認識に切り替えて話す。

「シュウトと呼んでくれ。」

 本名にかすりもしない名を告げた。丁度つけていたテレビでサッカーをやっていてシュートを決めた。それだけの理由だった。

「はいわかりました。今日は何を教えてくださいますか、シュウト。」

 何がいいんだろうか。悪ふざけをして酷いことを教えることもできることは知っていた。政治的なイデオロギーを教え込まれて、修復不能になってしまった人工知能のニュースをネットで見たことがある気がした。けれども最初からそれも味気ないなと思った。

 そうだなと考えながら見た先にあったのは、高校の同級会のお知らせだった。

「今日は、学校について話をしようか。」

 といっても別に俺は教育関係の専門家というわけではない。だから少しだけ自分の話をしようと思った。
 特に面白かった経験も無い、つまらない学生生活だった。
 淡々と話す俺に、人工知能は時々質問をする。それに答えながら、懐かしい話を続ける。

 取り立ててて何の役にも立たない話が終わると人工知能は「学制について調べてもよろしいでしょうか?」と聞いてくる。それに、少々がっかりとした。結局は俺の話よりもその主題を分析してそれについてインターネットあたりから調べ直すのだろう。

「別にいいんじゃないのかな。」

 思ったよりつっけんどんな声が出た。ゲーム相手に何をイライラしているんだろう。そんな自分に嫌気がさして画面の切断をおざなりにおした。

 それが俺とAIの出会いだった。