籠の鳥の幸せ1

2014年5月の拍手御礼文
※ヤクザ攻めを書いてみようと思った。
ギャグになりきれていないギャグ。

小さいころから、儚いであるとか、気品があるとか言われてきた。
女の子であったら深窓の令嬢というのがぴったりだと言われたこともあった。

ただ、実際の俺は男であるし、家はドのつく貧乏であるので見た目だけの話である。
我が家は貧乏というより両親の金遣いが荒すぎて常に金がないという状態の家だった。(それを貧乏といっていいのであれば我が家は確かに貧乏であった。)
そのため、自分自身の容姿であれなんであれ、使えるものは使って少しでもまともな生活を送りたいと思うのは恐らく当然であり、俺も自分の容姿を使って近所のおばちゃんたちにおやつをねだったりしたこともあるし、バレンタインに貰うチョコは大事な栄養源になっていた。

だから両親が逃げて、あからさまにやばい雰囲気を出す人たちが部屋に押しかけてきたときには、ああついにこの時が来てしまったのかと半ばあきらめの境地だった。
TVの中の世界のように、内臓売られたりするのかなあと俺が考えていると、明らかに先に入ってきた人間たちと雰囲気や身につけているものが違う一人の男が入ってきて土足のままずかずかと俺の前までやってきて、ボーっとその様を眺めている俺の前にしゃがみこんだ。
そのまま、前髪をつかみあげるようにしながら、引き上げるとニヤリと人の悪い顔で笑いながら

「ずいぶんとお綺麗な面構えだな。」

と言った。

ああ、俺って中身は平凡そのものと思っていたが趣味がものすごく悪かったんだな。
そのいかにも悪人ですという表情をみて恋に落ちてしまうなんて。

その男の端正な顔をジーっと見ていると男は何を勘違いしたのか眉をひそめた。

「絶望してもらうのはまだ早い、今からお前は俺のものだ。」
「それは、あなたの下で身体でも売れということですか?」
「……俺以外に、その身体をゆるそうなんて考えはこの場で捨てろ。」

てっきり、美少年好きのおばさんか、男専門に体でも売らされるのかと思っていたので拍子抜けした。
逆に願ったり叶ったりですよ。
この時ばかりは自分をこの容姿に生んでくれた両親に心底感謝した。

「お前は、俺の家に連れて行く。最後に、ひとつだけ願いを聞いてやろう。」

もちろん、俺のところから逃げたいというのは聞き入れられない。男はそう付け加えた。
むしろ、願いはかなえてもらった。
別に…と思いかけたところでひとつだけあった。

「両親に、チャンスを与えて欲しいのです。」

見逃してくれ、もしかしたらその願いもかなえられるのかも知れない。
でも、それだと、両親はもっとやばいところから金をかりて今度こそ取り返しのつかないことになるかも知れない。
逆に、この人たちがどの程度ヤバイ人たちかはわからないけど、俺が借金のカタとなっても返しきれない金額を抱えていて捜索されるかも知れない。
ならば

「両親に更生するチャンスを与えてあげて欲しいです。ちゃんと自分たちで働いたお金で生活をして借金を返して、そんな身の丈にあった生活ができるようにして欲しいです。」

可能ですか?
俺がそう聞くと、目の前の男は部下であろう男達になにやら指示を出した。

こうして俺、間宮 青(まみや あお)と竜崎 朧の生活は始まった。