IF2

◆ ◇ ◆

まただ。また、違いを見せ付けられてしまった気がした。
生徒会役員の輪の中で笑う、転校生をみて、彼に優しく笑いかける諏訪野が目に入る。

福島にとって、転校生はどうでもいい存在のはずだった。
それをうらやましいと思っている事実に気が付いて愕然とした。

優しい顔で笑いかけて、頭を撫でて、そんな風にする諏訪野を見て、転校生のようになんて思ってしまったのだ。
福島は、呆然とその様子を眺めた。

そして、ここ最近の生活が存外心地よかったことに気が付いた。
言い争いも無く、諏訪野と共に過ごすことは、安心できていたしぎこちなかった記憶しかないけれど、それでも、幸せだったのだ。

気が付きたくは無かったけれど、目の前で転校生が諏訪野に手を回して、まるで抱きつくみたいに近寄って。それを見て、どうしようも無いくらい、嫉妬していることに気が付いた。

転校生がこちらを見て、嗤った気がした。

気が付いてしまったところで何も変わりようが無いのは今までと同じだ。
けんかをしなくなったというだけで特に諏訪野と福島に学園内での接点は無い。

友人になることはきっとこれからも無いだろうし、ましてや、考えようとしたところで福島はやめた。

放課後の第二図書館は閑散としていた。
当番である福島一人きりだ。

大きく伸びをして、それからあと1時間ほど放課後はこうやって座っているのだ。
第二図書館はあまり利用者もいないため当番は一人きりだ。

福島の親衛隊も基本的にはここには来ない。

このまま今日も利用者はいないかと思ったところで、一人の生徒が入ってきた。
その人物に、福島は少なからず驚いた。転校生だったからだ。

福島の見ていた、転校生、柚木はどちらかというと図書館を好むようなタイプではなかった。
事実こうして当番をしていても今まで彼の姿を見ることは無かった。

「ああ、本当にいた。」

いつものように、転校生が話しかけてくる。
また、良く分からない、幸せな世界の話をされるのだろうか。

多分、自分は諏訪野以外とはしあわせになれない。
それを今日自覚してしまった。
だから、福島にとって転校生と話すことは今まで以上に意味の無いことなのだ。

「相変わらず、無表情のままだな。」

転校生の言葉に、福島は違和感を感じる。

「でも、今日、生徒会長様と一緒にいたときにはすごい顔でこっち見てたよね。」

嘲笑という言葉がぴったりの笑みを浮かべながら柚木は嗤った。

「相手にもされないくせに、なにもの欲しそうにみてるんだよ。」

クスクスと嗤いながら柚木は言う。
こちらが素の状態なのだろうか。あまりの驚きに声が上手く出せない。

「ふふっ、馬鹿みたいな顔。」

今日は、親衛隊も近くにいないし、どうせお前の言うことなんか誰も信じないだろうしね、と柚木は馬鹿にしたように福島を見た。

「見た目は、悪くないのに僕になびこうとしないのがいけないんだよ。
そのなりで、会長様に抱かれたいとか思ってるの?」

とんだ、お笑い種だよね。
福島は何も言い返せなかった。

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