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舞台は王道学園(非王道)
生徒会長×脇役(見た目男前)

生徒会長には、毛嫌いしている人間がいる。
その話は、この学園では有名だ。

圧倒的な人気で抱かれたいランキングをぶっちぎって生徒会長になった諏訪野は、学園内に一人だけ顔を合わせるたびに嫌味を言いあっている人間がいる。
嫌いなのであれば、関わらない様にすればいい。
そんな、普通であれば簡単なことができないのだ。

「おい。」

自分自身に視線が集中しているのを全く気にも留めず、諏訪野はは一人で食事をしている福島に声をかけた。
面倒そうに顔を上げる福島に諏訪野は舌打ちをした。

「今日の会食、兄も来るって何故言わなかった。」

諏訪野の声はいつもより、低く、苛立っていることが分かる。

「言う必要がなかったからですが?
……それから、兄弟間の不仲を勘ぐられる様な発言を公の場でするのはやめたらいかがですか?」

福島は、無表情のまま諏訪野に返した。
福島の精悍な顔立ちが無表情と相まって、反論しがたい雰囲気を作っている。
「お前は、俺の従者だろう。
俺に、たてつく様な真似はもうやめろ!」

諏訪野の語気が強くなった。
福島は溜息をついた。

「将来、貴方の部下になるだろうという事は家で決まっていますが、今現在、俺は貴方の従者ではありません。」

噛んで含める様な言い方に、諏訪野の苛立ちが増す。

「お前は!!……いや、もういい。
時間になったらうちが車を出すから遅れないように。」
「分かりました。」

殺気のこもった目で諏訪野に睨まれても福島は全く気にした様子がない。
苛立ちながら、教室を出ていく諏訪野を見送った後、クラスメイトが数人、福島のところへ集まった。

「いいのかよ。会長様の家、お前の親の上司なんだろ?それに……。」

チラリと目配せをした教室の隅には会長親衛隊が福島を睨んでいた。

「きちんと、諏訪野の父親には許可を取ってあるから問題ないよ。」

それに、と静かに福島は続けた。

「好き嫌いで仕事をするつもりは俺にはないから。」

福島は困ったように笑った。
といっても、表情はそれほど動かない。

けれども、先程諏訪野と対峙して居た時のような全くの無表情ではなく、表情は穏やかだった。

この二人を一言で表すとしたら、“犬猿の仲”。
学園中の人間がそう思っていた。

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