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これはデジャヴだろうか?
昨日も何かこんな展開になった気がする。
目の前には高梨教授、そして俺の横には馬鹿がいる。
高梨教授は「それは良かった」と笑っている。
何が良かったかというと、何故か俺の横に居る馬鹿との同居が決定してしまったのだ。
「高梨さーん、連れて来ました。」
ニコニコしながら研究室に入って行く馬鹿の後を俺も追う。
そこにはすでに高梨教授が待っていて、端にある商談用のスペースだろうか?ローテーブルをはさんでソファーがおいてあるスペースを進められた。
「仲良くやっているようだね。」
笑顔を浮かべながら高梨教授に言われ、いいえ違いますと返せたらどんなに良かっただろう。
馬鹿と言えば、「そうなんですよー」等とニヤニヤしながら返していやがる。
高梨教授はその返事にうんうんと納得したように首を縦に振っていた。いや、違いますからね。
どう考えても出会って二日で仲がいいとかおかしいでしょう。
「そういえば、昨日は山中君の家に泊まったのかい?」
「そうです。」
「神経質な君が、誰かの家に泊まれるなんて珍しい事もあったものだ。」
そう言いながら、高梨教授はわははと豪快に笑った。
「神経質?無神経の間違いではなくて?」
つい本音が口をついて出た。
だって、こいつが神経質だなんてそんな事ある訳無いだろう。
俺の言葉を聞くと、高梨教授は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした後、再び笑った。
「本当に仲がいいねえ。」
しみじみと高梨教授に言われた。
「ただ、他に泊めてくれる人がいなかっただけでしょう。本人も企業のヘッドハンティングから逃げるためって言ってましたし。」
すかさず反論していまう俺はおかしくは無いと思う。
「ササ君、いまだに追いかけまわされているのかい?」
「ええ、まあ、そんなところです。」
「ホテルこちらで手配するかい?」
「いや、ホテルは大抵そこに張り込まれちゃうので……。」
苦笑いをしながら、馬鹿が言った。
ホテルに張り込まれる?ホテル暮らしは面倒くさいからという理由だと思っていたが、違ったのか。
横に座っている馬鹿の顔をじっと見る。
直ぐに馬鹿はその視線に気が付いたようでこちらに顔を向けてニコリと笑った。
それを見ていた高梨教授がおもむろに口を開いた。
「山中君って、K地区のあの家に住んでるの?」
「あ、はい、そうです。」
「山中君さえよければ、ササ君に一部屋貸し出してくれないかな?」
そう言われた瞬間、思考がフリーズして、動きも止まった。
それがいけなかったのだろうか、フリーズする俺を置き去りにして馬鹿が話しだす。
「それ、いいですね。家賃ならきちんと払いますし、知り合いということならばとりあえず住民票を移すさないとしても問題ないので、足取りも追いにくいでしょうし。
昨日一昨日と一緒に居て、共同生活の問題点も無かったですし、むしろ色々合うのが分かって丁度いいかなという感じです。」
「そうか、山中君はどうかい?」
「いや、はぁ!?え?」
「僕の事嫌いなわけじゃないですしいいですよね?」
「え?」
「もしかして嫌いなんですか?」
顔を寄せながら馬鹿に聞かれた。
二人きりであれば間違いなく、嫌いに決まってるだろと言い返したのだがここには高梨教授もいる、小心者の日本人気質が前面に出てしまい否定的な言葉は口を出ない。
「嫌いで無いなら、一部屋貸していただけませんか?」
「大学での研究が原因で居住を転々としなければならない状態になってしまっているので是非私からも、お願いしたい。」
憧れの高梨教授にこう言われてしまっては、俺に取れる選択肢は一つしかない。
強張った表情のまま、ギギギとぎこちなくうなずいた。
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「くそ、何でこうなった!!」
帰り道、ため息を吐きながら言った。
「まあ、そんなにイラつかないでくださいよ。」
「はぁ!?変態と同居しなくちゃならなくなって誰がイラつかないでいられるんだよ!!」
苛立ちもそのままに、馬鹿に言ってやる。
「と言っても、高梨さんの手前、今更断る訳にもいかないですもんねぇ。」
何だこいつ実は腹黒か?舌打ちをしながら馬鹿を睨みつける。
「いいか、変態野郎良く聞けよ。これ以上、変態行為をしたら即追い出すからな?」
「変態行為ってどんな行為のことでしょう?」
全く、堪えてませんという風に馬鹿が返した。
「そりゃあ、この前の。キ、キスしたりとかそういうのだよ。」
「ああ、分かりました。これからは同意を得てからやるようにしますね。」
イッケメーンスマイルを浮かべながら変態馬鹿が言ったので思わずやつの後頭部をひっぱたいてしまった。
馬鹿が変な事を言うから悪い。
「同意する訳無いだろ。」
「そうですかね?」
絶対に、同意する訳無いだろ、その時の俺はそう思っていた。