愛し合ってみませんか1

それから、しばらくたって夏が過ぎ秋が来た。
俺とあいつは相変わらずだ。

夏は、やれ汗がエロいだの、チラリズムだの脳の構造を疑う様な発言ばかりしてくださった。
夏休みは結局ほとんど実家にも帰らずにあいつと過ごした。

大学でたまに一緒に飯を食う事もある。ただ、ものすごく視線が痛い。
しかし、あれ以降大学で過度なスキンシップを取ることは無くなったので徐々にホモきめえという視線は減ってきている。

家では相変わらず、あいつからキスをしかけてくる。

俺からすることはない。
出来るはずがない。

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――チャラッチャー

夕飯を食べていると携帯の着信音が鳴る。
メロディーからいって俺の物ではないので、あいつの物だろう。
音が聞こえていない訳無いのに、無視をして飯を食うあいつ。

「おい、出なくていいのかよ。」

声をかけると「ああ。」といってスマホを取りだした。
出るのかと思ったが、そのまま恐らく保留にして、何やら操作をしている。

「聞かれると困る話しなら席を外すぞ。」

俺が声をかけると、奴はニッコリと笑って返した。

「今、着信拒否にしましたので、大丈夫ですよ。」
「は!?いやいやいや、いいのか?」
「ああ、単なる迷惑電話ですから?」
「本当か!?大学の知り合いとかじゃないのか?」

俺も学んだ、友人か?と聞くと友人ではないと答えられてしまうのだ。
奴の中では仲良くしている人間も友人という括りににはならないらしい。
気に入らないからというより、間が悪かったに近い状況の人間ですら容赦なく切り捨てる様を見せつけられた事があるため不安なのだ。

いや、人事と言われればそれまでなのだが、それでもやっぱり不安なのだ。

「大学、ではないですね。」

この話はここでお終いという拒絶を含むきっぱりとした口調で言われてしまえばそれ以上口を挟む事も出来ない。

それからも、ちょくちょく同じような電話が奴の元にかかってきているようだったが、奴がそれを気にしている様子もましてや気を取られるという様な事は一切なかった。