クソッ。
何故俺は、あの変態馬鹿野郎の朝飯を作っているんだ?
イライラしながら卵を焼く。
朝飯は昨日の残りの味噌汁と目玉焼きだ。
炊き立てご飯は、どんなごちそうより旨いと思う。
変態も起きてきたようで、こちらへ来た。
寝ぐせ一つないのが、むかつく。
イケメンは起きぬけでもイケメンなのか、自分との違いを見せつけられているようで悔しい。
「おはようございます。」
イッケメーンスマイルで挨拶をされたので、一応俺も「おはよう」と返した。
「昨日夜、高梨から連絡が、ありまして、昨日ゆっくり話もできなかったので、今日改めて時間を取りたいということですがどうしますか?」
「高梨教授がご迷惑でなければ、喜んでという感じなんだが、どんな感じだ?」
昨日のセクハラ行為は無かったものになったらしく普通に話してくる馬鹿。
いや、蒸し返されても困るは困るのだ。
「それでは、お昼頃伺うと話しておきますね。」
「分かった。」
あまりに、普通で、やはりあれは冗談か何かか、無理矢理泊まるための手段だったんだろうと結論付ける。
朝飯を食べながら、ちらりと馬鹿を盗み見る。
本当に恐ろしく整った顔立ちだ。
昨日の登校時目立ってしまったのは、こいつの顔が良すぎるというのも多大に有ったと思う。
この顔に、軽薄ながらも丁寧な物言い。こいつの言う事が本当だとして、定住する事が難しいとしてもいくらでも宿泊場所の提供をしてくれる人間位居そうなものだ。
何故、俺の所なんだ?
男同士で面倒臭くないから?
祖父の研究資料に興味があったから?
部屋数が多くて、干渉されないから?
どれも、決め手に欠く気がした。
「そんなに、見つめないでください。」
わざとらしくくねくねとしながら言われた。
気持ち悪いわ。
「何か、有りますか?」
そう聞かれるが、特に何も無い。
まあ、俺達の間には正に何も無いのが問題なのだが。
何とか、頭をひねる。
「そう言えば、昨日風呂入ってないよな?シャワーでも浴びるか?」
昨日、あのまま、こいつの居る客間に行く事は無かったのでたぶん風呂にも入って無いだろう。
「そうですね。それでは出かける前にお借りしますね。」
本当に言いたかった事はそんなことではないのだ。
ただ、出会って二日目の友人でも無ければ何でもない、目の前の男に言える事なんて何にも無かった。