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理一が自室に戻ると、一総が扉の横に立っていた。

「あんた、こんな目立つところで何やってるんすか?」
「ああ、誰も俺には気が付いてないから大丈夫だ。」
「はあ?」

思わず、馬鹿にするように聞き返した理一に一総は、そう言えば言ってなかったかと話し出した。

「花島の能力で俺自身を認識外にしているんだよ。
有名人とお忍びでホテルに行くときなんか便利だな。」

理一はその軽々しい言い方にがっくりと肩を落とす。
要はステルス能力という事だ。ホテルに行くときに便利と仕事での使い方を説明する一総のもったいない使い方しか説明しない徹底っぷりを見せ付けられて相変わらずだとも思った。

「学内は能力禁止っすよね?」
「まあ、堅い事いうな。」

そう言って一総は笑う。
理一は部屋の鍵を開け、一総に入る様促した。

学園は異能のものが大多数を占める関係で一人部屋だ。しかし、生徒会長である一総の部屋に比べ理一の部屋は狭い。
一総はベッドに腰掛けると、横に座るように理一を促した。

「あんたの性欲ってどうなってるんすか?」

一言で言えば、ムカついたのだ。
すると、一総は声を上げて笑った。

「何がおかしいんだよ。」

理一は先程の電話からちょくちょくと間違った敬語が抜けていることにも気が付かない。

「一々、セックスしていたらこちらの身が持たないだろう。
仕事では一切セックスをしない訳じゃないが、わざわざしなくていい肉体接触はしない。」

真剣に言われ、理一はゴクリと唾を飲み込んだ。

「じゃあ、なんで」

俺とはするんですか?という科白は言えなかった。
一総が自分の唇で理一の唇を塞いだからだ。

ちゅくちゅくと宥める様なキスをされる。
まるで、何も聞くなと言われたみたいだった。

聞きたい欲求がない訳ではないが、それを聞いてどうするのだとも思った。
二人の関係は強いて言えば単なるセフレなのだ。あまり、聞きすぎるのはマナー違反な気がした。

理一は考えることを放棄して、そっと一総の口腔を舐め返した。
一総とのキスは好きだ。

口の端から出る唾液も気にならない位、貪って、貪られた。

快感から来る涙で瞳を潤ませた理一が指で唾液を拭うと、乱暴にベッドに押し倒された。

手際よく脱がされていく服を見ながら、理一は目の前にあった、一総の喉仏をそっと撫でた。

何となく綺麗な形をしていると思った。
一総はどこもかしこも綺麗だった。

服を着ているとか着ていないとか、そんな事はどうでも良かった。
中途半端に脱がされた状態で、理一は手を伸ばした。

ぎゅうと一総を抱き寄せると

「早く、抱けよ。」

それだけを伝えた。
まだ、服を着たままの一総はズボンのポケットから使い切りタイプのローションを取り出すと、手に出した。
そのまま、流し込む様に、理一の中に塗り込む。

「それ…、ぬるくて気持ち悪い。」

押し殺した声で理一は言った。

「前は反応してるだろ。」

ローションが残った手で一総は理一の起立を撫でた。
くちゅりと卑猥な音を立てて、一総は理一の中心をこする。

「んンっ…、なあ、ヤリたかったから連絡したんだろう。もう入れればいいじゃねーか。」

素の話し方に戻った理一が言うと、一総は啄む様にキスをした。
下は2本の指を入れバラバラと動かす。

「ふぅ、あっ、アッ。」

今までに少しずつ開発された中が、うねる。
快感で理一の頭の中がいっぱいになった頃、いつもよりゆっくりと一総が理一の中に入ってきた。

「中ゴリゴリするっ…やっ、ああっ。」

抑えられない声が、理一の口から洩れる。
一総が双眸を下げ、理一の髪の毛を後ろに向かって撫でつける。

一総は中を確認するように腰を回して、それから最奥に腰を進めた。

「木戸は可愛いな。」
「…はっ、なに、言って、んんぅ。」

可愛く無い容姿だという事は知っているし、多分セックス中の態度も可愛くはない。
リップサービスにしても、あり得な過ぎる。

だが、言い返そうにも腰の律動が早まって無理だった。
ただただ、快感に翻弄されて、もう腰から下は気持ちいい以外の感覚が無くなって、何度も何度もイカされて、もう駄目となったところで漸く一総も理一の中に吐き出した。

理一が離れがたくてそのまま抱き着くと、一総が体重を理一に預けた。
それが、くすぐったいような嬉しい様な、不思議な気持ちになって、でもどうしたらいいか分からず、理一はそっと目を閉じた。